専門家向け勉強会「ケーラー多様体上の標準計量とその周辺 5」

日程と会場

  • 2024年 8月27日(火), 28日(水)
  • 場所:東工大大岡山キャンパス本館 201 室 (東工大本館内の地図)
  • 黒板、プロジェクター (VGA接続) が使えます
  • 会場ではeduroamが使えます。

講演予定者

  • 井上瑛二氏(理研)
  • 四ッ谷直仁氏(香川大)
  • 橋本義規氏(大阪公立大)
  • 宮武夏雄氏(東北大)
  • 本多宣博氏(東工大)
  • 青井顕宏氏(和歌山高専)
  • 尾高悠志氏(京大)

  • 中村聡氏の講演(下記参照)は都合によりキャンセルとなり番外編の講演に変更となりました。
    Robert Berman氏の講演は都合によりキャンセルとなりました。

スケジュール

8月27日(火)

  • 9:30-10:30 井上瑛二氏 「創発時空と複素幾何」
    内容は未定ですが、以下に挙げる文献などを参考に話をして、創発時空に関連する"問題提起"をできたらよいなと考えています。
    Berman, "Emergent Complex Geometry" arXiv 2021
    Berman, Collins, Persson, "Emergent Sasaki-Einstein geometry and AdS/CFT" arXiv 2020
    Rangamani, Takayanagi, "Holographic Entanglement Entropy" arXiv 2016
    創発時空について:我々のような数学者は「まず空間が与えられたとして、その上で起こる事象を理解しよう(標準計量を探そう、フローを走らせて極限挙動を観察しよう、など)」という考え方をしますが、近年の一部の物理学者は"時空"に関してこの発想を逆転し、「まずd次元の空間を成す(量子)多体的な状態が時空を前提とせずにあり、その状態を再現する量子回路(計算過程)を考えるとき、『"計算コスト"を最小化するような量子回路』が時空の構造を成す(創発時空、ホログラフィー原理)」というようなことを考えてブラックホール・エントロピーや時空の研究をしているようです。このような創発時空の考え方を自分が理解できる範疇で勉強してきて話をしたいと思っています。
  • 11:00-12:00 四ッ谷直仁氏 「Permanental processes and toric Kähler-Eisntein metrics」
    Abstract: In 2018, Berman-Önnheim provided a stochastic dynamical approach for constructing Kähler-Einstein metrics on toric varieties. In this talk, we survey Berman’s probabilistic approach to Kähler-Einstein metrics in the toric setting.
    Reference: Berman-\"Onnheim, "Propagation of chaos, Wasserstein gradient flows and toric K\”ahler Einstein metrics" Analysis & PDE. 2018. 1343--1380
  • 14:00-15:00 橋本義規氏 「Berman-Boucksomの平衡エネルギーと有限次元近似」
    要約:Berman-Boucksomの論文“Growth of balls of holomorphic sections and energy at equilibrium”について説明する.特に,この論文で定義された平衡エネルギーを紹介し,有限次元空間H^0(kL)を用いて定められた汎関数がk \to \inftyで平衡エネルギーを近似するという結果について説明する.次の宮武氏による講演では,本講演で紹介する結果が用いられる予定である.
    参考文献. Berman-Boucksom, "Growth of balls of holomorphic sections and energy at equilibrium" Invent.Math. 2010. 337--394
  • 15:30-16:30 宮武夏雄氏 「複素多様体上のFekete点の平衡測度への収束定理 」
    Berman-Boucksom-Nystr\"omによる論文``Fekete points and convergence towards equilibrium measures on complex manifolds" [BBN]及び, その背景の解説を行う. 上記の論文の主定理は三つあり, 特に, 最初の主定理のTheorem Aは, 複素平面$\mathbb{C}$においては古典的な結果だが, $\mathbb{C}^n$の場合には長らく未解決であったFekete点をサポートに持つ確率測度の平衡測度への収束定理 (cf. [ST, Appendix B]) を, 肯定的に解決するとともに非常に大きな一般化を与えている. 本論文は確率測度の列に付随するDonaldsonの$\cal{L}$-汎関数の列が平衡エネルギーへ収束するという条件からBergman測度の列が平衡測度へ収束することが従うことを主張するTheorem Cを用いて残りの二つの主定理を導くという論理構成であり, Theorem Aを導く際には, Theorem Cに加えてBerman-Boucksomの本論文以前の論文[BB]において示された平衡エネルギーの近似定理が用いられる. この定理は, 橋本先生の講演において解説される予定である.
    参考文献.
    [BB]Berman-Boucksom, "Growth of balls of holomorphic sections and energy at equilibrium" Invent.Math. 2010. 337--394
    [BBN] Berman-Boucksom-Nystr\"om, "Fekete points and convergence towards equilibrium measures on complex manifolds" Acta Math. 207(1): 1-27 (2011)
    [ST]E. B. Saff and V. Totik, "Logarithmic potentials with external fields" Grundlehren der mathematischen Wissenschaften 316 (1997)
  • 18:00頃(?)- 懇親会
  • 8月28日(水)

    • 9:00-10:00 (番外編)本多宣博「コンパクト化を持たない複素曲面の具体的構成」
      要約:標題の性質を持つ非コンパクト複素曲面を構成する一つの方法を説明する。
    • 10:30-11:30 青井顕宏氏「Fano多様体上のKähler-Einstein計量への確率論的アプローチ, 及びそれと量子化によるアプローチとの比較について」
      要約:Bermanの論文「The probabilistic approach vs the quantization approach to Kähler-Einstein geometry」を扱う. Fano多様体が一様Gibbs安定であれば一様K安定であることが藤田-尾高によって証明されている(したがってKähler-Einstein計量が存在する)が,この論文では一様Gibbs安定であればKähler-Einstein計量の存在が従うことを, 一様K安定性を経由せずに直接証明している. またこれを精密化し, 分配関数と量子化された(twisted)Ding汎関数との関係を直接見ることで, 藤田-尾高によって既に知られていた, δ_k ≧γ_k という不等式 (γ_kはレベルkで定義された分配関数が, 逆温度についてどれくらいwell-definedかを測っている)の別証明を(Rubinstein-Tian-Zhangの結果を経由することで)与えている. この辺りの話を時間の許す限り説明する.
      参考文献. Berman, "The probabilistic approach vs the quantization approach to Kähler-Einstein geometry" Analysis Math. 2022. 347–375
    • 13:30-15:00 尾高悠志氏「Calabi-Yau錐のコンパクトモジュライとその周辺」
      要約:今年度の勉強会のもう一つの候補は“重力インスタントン“ないしその高次元化、つまり非コンパクト完備hyperKahler/Ricci-flatの話であった(来年度の候補の一つ?) その中で体積増大率が最大かつ最も単純な場合の一つに相当するのが“Calabi-Yau錐“(錐は微分幾何の、実1次元増やす計量錐の意味)であり、半径1で切ってできる佐々木-Einstein多様体と対応しているとも言える。例えばKlein特異点、切るとS^3/有限群ができる。 またはKahler-Einstein (log) Fano多様体Xがあればその錐(代数幾何の意味での! つまり複素1次元増やす)をとることでカラビヤウ錐ができるので、Fano多様体のK安定性やK-moduliの議論も自然とここに拡張されるべきであるが、irregular Reebベクトル場の場合が非自明となる。 本講演の前半(主要部)ではCY coneのコンパクトなK-moduliの(代数幾何的)構成の概要を紹介する。 Fano多様体のK-moduliの構成の特に最近の代数化されたアプローチを復習し、それに使われる不変量をデルタ不変量から局所体積に変え、技術をどう変えることで一般化するかが問題である。代数幾何側の技術的難解さをなるべく端折って、幾何学的な本質的な部分を解説したいと考えている。S^1ないしC^*作用を生まないIrregular Reebベクトル場に相当するようなものを代数幾何的にどう扱うべきかが一つのポイントである。そのあとは時間が許す限り、体積最大でない場合やバブルの構成について考えていること、もしくはBermanとの議論のどれかに触れる。
      参考文献. Odaka, "Compact moduli of Calabi-Yau cones and Sasaki-Einstein spaces" arXiv 2024
    • 15:15- 自由討論
    • 本来予定されていた中村聡さんの講演:「測度を保つ正則ベクトル場とBerman-Gibbs安定性」
      要約:Bermanの論文「Measure preserving holomorphic vector fields, invariant anti-canonical divisors and Gibbs stability」を扱う.ファノ多様体のKähler-Einstein計量の確率論的アプローチでは,各自然数kに対し定まる実数不変量γ_kが重要な役割を果たす.もしγ_kが一様に1より大きければ,ファノ多様体は一様K安定であり,特にこのとき非自明な正則ベクトル場は存在しない.この論文では,あるkでγ_kが1より大きければ,非自明な正則ベクトル場が存在しないことを証明している.3通りの証明がなされているが,特に(青井さんの講演に関係する)量子化Ding汎関数を用いた証明を紹介する予定である.
      参考文献. Berman, "Measure preserving holomorphic vector fields, invariant anti-canonical divisors and Gibbs stability" Math. Ann. 2024. 4383–4404

    世話人

    橋本義規(大阪公立大) 中村聡(東工大理) 本多宣博(東工大理)

    本ワークショップは, 大阪公立大学数学研究所(文部科学省共同利用・共同研究拠点「数学・理論物理の協働・共創による新たな国際的研究・教育拠点」JPMXP0723833165)の共同利用・共同研究の一環として開催されます。

    本ワークショップの開催にあたり、科研費基盤(C) 22K03308 から補助を受けています

    過去の記録

    第1回 (2020年度実施)
    第2回 (2021年度実施)
    第3回 (2022年度実施)
    第4回 (2023年度実施)

    最終更新日 2024年8月21日

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